1人が本棚に入れています
本棚に追加
「お前、子どもの頃より少し大人しくなったと思うたら変わっとらんな……」
「申し訳ございません……」
ーー今となっては父上が羨ましい……
右近は深々と頭を下げるしかなかった。
「先に部屋へと参るがお主は少し頭を冷やしてこい。」
「承知いたしました。」
友照と別れた後、右近は庭へと向かいヒヤリとした空気にあたりにいった。
息をつく、惟政の言葉をふっと思いだす。
ーー惟政様の息子とやらどんな方なのだろうか?
その方の側で仕えよと申された、惟政様のような魅力な方なのだろうか?
そうでなかったら仕えぬ!!
心を整えて戻ろうとしたら首筋に一つの殺気、右近は刀を抜くとその殺気をスッと払う。
「何者、無礼であるぞ!!」
「ほぅ、そなたなかなかやるの……」
刀を構えたまま右近は睨む、前には短刀を構える男ーー
その男はふっと笑う、まるで嘲笑っているかのような……
ーーこの男、俺を馬鹿にしてるのか!!
このまま、打ち首にしてやる!!
歯がギリッと音をたてる、距離を少しずつ取っていく。
男はその場から一歩も動かない。
ーー斬られて死にたいのか!?
距離を取るのを止めて、相手がどうでるか試すことにした。
男がゆっくりと歩み出す、刀を構え直す。
走り出し、短刀を構えながら右近へと近づいてくる。
刀を振った。だが、空振ってしまった。
短刀が刀を後方へと押しやる。
ーーこの男、何処にこんな力が!!
余りの出来事に刀を落としてしまった。
その一瞬、男は右近を抱き口を奪った。
ーーっ!!?
余りに強引な口付けに右近は男を突き飛ばして、息を整える。
「……ハァッ、ハァッ……
な、何をするか、この無礼者!!」
後ろに落とした刀を構え直して男を睨みながら刀を向ける。
「そんなに睨まなくても良いではないか、主を試したまでよ。」
男は砂を払いながら立ち上がる。
最初のコメントを投稿しよう!