1人が本棚に入れています
本棚に追加
「試しただと!!
貴様、本当にふざけているのか!!
今度という今度は殺してやる!!」
頭が怒りで包まれる、男は右近の表情を見てギョッとした顔になる。
「ま、待て!!
落ち着け、そんなに怒らなくとも!!」
「黙れ!!」
刀を首もとへ突きつける、もう怒りの限界だった。
ーーこんな、こんな無礼な男なんかに俺は!!
「貴様が何者であろうとも絶対に許さない!!」
「だから、待てと言っている!!
私は和田惟政嫡男、和田惟長であるぞ!!」
右近は男の発した言葉を信じることができず刀を地へと落とし男を見つめ直す。
ーーこの男、今なんと……
……なんと……申した?
「和田惟政嫡男……だと……!?
嘘を申すな!!」
ーーこんな男が和田家嫡男だと!?
信じられぬ!!
「嘘ではない!!
和田家嫡男和田惟長とは私のことぞ。」
男……和田惟長は真っ直ぐに冷静に右近を見つめて話す。
その視線はまるで右近の心を見透かすかのような鋭い瞳をしている。
右近の心がドクンと大きく波打つ。
ーーこの男が、この者が和田惟長様……
じっとその瞳に吸い込まれていくような感覚を俺は、俺は今味わっている……
「お主の胸に掛かっとるその十字架、切支丹じゃろ?
高山飛騨守友照の息子高山右近とはそなたのことじゃろ?」
ーーもう、そこまでおわかりなのか……
「はっ、高山右近とはこの私にて……
先程は無礼を……」
頭を深々と下げ惟長に無礼をしたこと何もかも謝った。
惟長はククと笑うとさっき右近を襲った短刀を抜き彼の前に差し出す。
「右近、これから私の者として一生仕えると誓えよ。
私は主を離す気なんて全うもない、無論伴天連にもじゃ……」
惟長は右近の胸に……その胸に掛かっている十字架を上から掴み顔を近づけさせそして耳元で囁く。
「お前の主は誰ぞ? 右近……
忠誠を誓えよ」
また、右近の胸が大きく波打った。
驚きとは違う、さっきから胸がドクンドクンと波打つのが止まらない。
あぁと小さい呻き声が右近から漏れる。
最初のコメントを投稿しよう!