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「どうした右近、私に誓う気になったか?」
続けて耳元で優しく囁く、また小さく呻き声を漏らし背筋がゾクリと強張るのを逃さず更に囁く。
「私はお前が必用なのだ」
「俺が……必用……?」
何かに驚いたような大きく見開かれた目を惟長は見つめる、惟長は右近から顔を離し十字架を掴んでいた手も離す。
「そうだ、私には忠誠を誓ってくれる家臣がいない。」
「忠誠を誓ってくれる家臣……」
呟きながら力が抜けたように右近は地へと座り込み、惟長を見つめ続ける。
ーーこの方の力になりたい……
俺の中にあった惟政様に対するお気持ちはこの方へと変わってしまった……
あぁ、憎らしいほどこの俺の何もかもを奪い更に俺を欲するなんて……
何て、お方なんだ。
右近の頭の中は惟長に対する思いで一杯になる。
目をソッと閉ざし、要らぬ思考を退かす。
そして目を開き、口を開く。
「私は……私は惟長様の者となりこの身体も思いも何もかも惟長様に捧げる所存にて」
ーー俺はこの夜、惟長様に誓った。
そう、これで良い。
俺の身体も思いも何もかも惟長様の物となりたいと……
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