1月 元彼

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 只、立ち尽くし、遠ざかる彼の背中を見つめているだけ……。  何がしたいのかも分からない。  何か言おうと思えば思うほど、唇は固く閉ざされ息苦しくなる。  ……どうしよう。  そう思った時だった。  彼がくるりと振り返り小走りで私の元へと戻って来た。  え……? 「あのさ」 「……うん」 「俺さ」 「うん」 「今、美容師やっててさ」 「ぇ……う、ん」  そこまで言うと、彼は徐に私が手に持っていたスマホを奪い取り、何かを入力し始めた。 「一応着付けとか出来るんだ。だからさ……もしもだよ、万が一だけど……」  そう言いながら、私にスマホを差し出した。    その画面には携帯の電話番号らしき080から始まる数字達。 「必要だったら呼べよ。何時でもいいから」  そしてまた、あの笑顔。  私の大好きな、キラキラの優しい、あの彼の顔。  それだけ言うと、彼は『じゃあ』と小さく呟き、今度は振り向きもせずに走って行ってしまった。  私の手の中に残った小さくも確かな彼の痕跡。   『何時でもいいから』  ならそれ、今でもいいって……事ですか? 2016.1.24(日) by KAORI ~ひとこと~ 1月中に公開出来て良かったです(^_^) これから月一以上、頑張ります♪
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