一章 出会い

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正直このままじゃおちおち眠れもしねぇ。 なにかいい手は…なんて考えながら、俺はさっき撒いたばかりのスーツ男たちの気配に気づき、慌ててその辺の廃墟の中へ身を隠す。 この辺りは旧市街ってだけあって人通りもなけりゃ家も建物も壊れかかってる。 隠れる場所はいくらでもあった。 俺は、そーっとすぐ近くにあった民家らしい建物の戸に手をかけ、ほんのちょっと開けてさっと中へ滑り込んだ。 すぐに、戸を閉める。 戸が少しはきしむかと思ったが、案外何の音も出さなかった。 ラッキー、と思いつつ俺は、玄関口から部屋の中へ、そうっと足を踏み入れる。 そうしながら、妙なことに気がついた。 外側の壊れかかった、打ち捨てられた民家の外見とは裏腹に、中は案外きれいなもんだ。 さすがにほこりは床にも家具にも積もっちゃいるが、どこも傷んじゃいねぇし。 今現在もここで誰かが生活しててもおかしくねぇくらいだ。 現に、玄関を入ってすぐ、キッチンのコンロの上には鍋が。 テーブルの上には「これから夕食ですよ」と言わんばかりにナイフやフォーク、干からびた何かが乗った皿。 ワイングラスの中には液体まで入ってやがる。
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