一章 出会い

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まったく、飲み終わった瓶だけ丁寧に残しとくってどーいう趣味なんだよ。 がっくりしながら瓶を戻して、俺は改めて部屋の中を見回す。 ふかふかした絨毯に、高級そうな家具。 何で空のワインボトルを んなとこに置いたのかは謎だが、元々このワインたちも見るからに高そうな代物だ。 ここには金持ちが住んでたんだな。 どんな理由でここを出ていったのかは知らないが、食事の状態といい、いきなり思い立ってどこかへ出たんだろう。 少し席を外しただけだったはずが、そのまま永遠に帰ってくることがなかった。 そんな風だ。 ま、どこに行ったんだか知らねぇが…こいつは案外“あたり”かもな。 ワインはだめでも、金目のもんくらいはあるかもだぜ。 こういうことに関しちゃ、俺は運がある方だ。 ゴルドーの手先から逃げる途中、こんな金持ちの家に潜り込んじまったのも何かの縁だ。 よーし、ちょっと調べてみるか。 俺はいそいそと二階への階段を探して上り、上階へ上がる。 上がるとすぐにまっすぐな廊下が伸びて、廊下の両側には二つずつ、計四つの部屋の戸があった。
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