一章 出会い

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ま、しばらくはここに身を潜めて様子見るしかないな。 そう、考えた俺の脳裏に。 ピコン、とひらめくものがあった。 俺はパッと立ち上がってクローゼットに手をかけ、半身だけでドレッサーの方へ…正確にはその鏡の方へ振り返る。 男の割には細身で、顔立ちも細い自分の姿が正確にそこに映し出される。 この瞬間……何で んな事を思いついたのかは、今となっても分からねぇ。 俺は、この頃切りそびれて少し長くなっちまった、一つくくりの髪をほどき、クローゼットの中から適当に服を取り出す。 水色の、清楚なワンピースだった。 そうして鏡に挑戦するようにそいつを自分の顔の下へ持ってくる。 にっこり微笑んで見せると、鏡の中でも、若い娘にも見えなくはない美人が、にっこり微笑み返した。 ──もしかしたら、イケるかもしれねぇ。 ◆◆◆◆◆ 「はっはっはっー!どーよ、これ!」 と、ジャーンと華麗にポーズを決めて、俺は鏡の前に立つ。 そこに映ったのは、どこからどー見ても可愛らしい、美人の女の子だった。 ふわっとカールさせた金髪には白いリボンを。 水色のワンピース姿はちょっと見た感じ、いいとこのお嬢様って感じだ。
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