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薄めに化粧もしてるし、まつげもいつもの二倍増しだ。
いつもの俺とはもちろんかなり印象が違う。
「まっ、こんだけうまく化けてりゃバレねぇだろ!
これで大手を振って街を歩けるぜ!」
だっはっはーっと鏡の前で笑ってやる。
──と。
がたり、とこの家のどこかから物音が響いた。
一瞬借金取りの仲間か?!とヒヤリとしたが……
~ま、このナリなら大丈夫だろ。
この素敵変装、見破れるもんなら見破って見やがれ!
自信たっぷりに思い、すました顔でその辺の椅子に座る。
足音が、上の階に上がってきた。
足音は一つで、思ったよりは軽い。
ただし。
──帯剣してやがるな。
思わず口をへの字に曲げる。
俺は耳もかなりいいんだ。
今までゴルドーの手先から逃げる途中の経験からしても、こいつは信用していい。
階段を上ってくるのは、小柄な女ってとこだ。
それも、足音を立てねぇように慎重に足を運んでやがる。
まあまあ剣も扱えそうだな。
あっ、でも美人のお姉さんだったらナンパしたかったなぁ。
ちらっと頭をよぎったが、バッチリメイクをすぐに落とせるわけでもねぇ。
悔しいが。
な~んて事を考えてると。
足音が、この部屋の前で止まる。
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