一章 出会い

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どくどくと、心臓が鳴る。 ガチャ、とドアノブが回された。 そうして、開く。 俺は意を決してそっちを振り向いた。 ドアノブを回したのは──女じゃなかった。 小柄で、帯剣してる、細身の……男。 っかしいなぁ。 俺の勘が外れるとは…。 思いながらも俺はビックリした風に…実際ビックリしてたが…男を見る。 見たとこ俺と同じか、一~二個下ってとこだろう。 黒髪にすみれ色の目。 まあまあの見た目でもある。 向こうも驚いたみてぇだった。 ま、確かにこんな謎の廃墟に人がいたんじゃな。 考えつつも俺は口に手を当てて口元を隠し、なるたけ高めの声でしゃべる。 「だ、」 まずは試しに一言。 ごくり、息を飲み込んで先を続けた。 「誰?」 案外イケそうだ。 男はさほど疑問を持たず、むしろ一瞬ギクリとしたように俺の方を見た。 しばらく固まって、俺をまじまじと見る。 俺は冷や汗が垂れそうになるのを必死で耐えた。 こいつがゴルドーの手先で、俺の変装を見破ったらどうなるか。 その腰に下げた剣でズバッと切られる。 俺は憐れに女装姿のまま死に絶えて、ゴルドーの元へ送られるって訳だ。 その時のゴルドーのバカ笑いが、はっきり目に浮かぶようだった。
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