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どくどくと、心臓が鳴る。
ガチャ、とドアノブが回された。
そうして、開く。
俺は意を決してそっちを振り向いた。
ドアノブを回したのは──女じゃなかった。
小柄で、帯剣してる、細身の……男。
っかしいなぁ。
俺の勘が外れるとは…。
思いながらも俺はビックリした風に…実際ビックリしてたが…男を見る。
見たとこ俺と同じか、一~二個下ってとこだろう。
黒髪にすみれ色の目。
まあまあの見た目でもある。
向こうも驚いたみてぇだった。
ま、確かにこんな謎の廃墟に人がいたんじゃな。
考えつつも俺は口に手を当てて口元を隠し、なるたけ高めの声でしゃべる。
「だ、」
まずは試しに一言。
ごくり、息を飲み込んで先を続けた。
「誰?」
案外イケそうだ。
男はさほど疑問を持たず、むしろ一瞬ギクリとしたように俺の方を見た。
しばらく固まって、俺をまじまじと見る。
俺は冷や汗が垂れそうになるのを必死で耐えた。
こいつがゴルドーの手先で、俺の変装を見破ったらどうなるか。
その腰に下げた剣でズバッと切られる。
俺は憐れに女装姿のまま死に絶えて、ゴルドーの元へ送られるって訳だ。
その時のゴルドーのバカ笑いが、はっきり目に浮かぶようだった。
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