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「ま、待て!私はここに住むなんて一言も…!」
ダルが慌てたようにいってくるのに、俺は肩をすくめて横目でダルを見た。
「ダル。
行くあてねぇんだろ?宿を探せば金がかかるぜ。
俺がせっかくここに住んでいいってんだから大人しくそうしろよ。
タダで住まわしてやるぜ。
その代わり、俺のことはゴルドーと手先たちには内緒で頼む」
片目でウインク一つくれてやると、ダルが呆れたように俺を見返す。
「何を自分の家のように……。恩着せがましいにも程がある」
「細かいことは気にすんなっての。
いーからいーから」
「…………」
おうおう、ダルのやつ、真面目だなぁ。
黙り込んじまったぜ。
俺が頭の後ろで手を組んだままダルの返事を待っている……と。
しばらくの沈黙の後、ようやくダルが一つ息をついた。
「──分かった。そうさせてもらおう」
その答えに俺はにやりと笑う。
最初から素直にそーいやいいんだよな。
まったくもったいつけやがって。
「──じゃー、ま、よろしくな、ダル」
俺が言うと……ダルがふっと一つ息をついて「ああ、よろしく」と返したのだった。
この出会いが──後々とんでもない事件につながることになるとは、俺はまったく全然予想だにしなかったのだった──。
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