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壁、床に広がる血、血、血。
倒れた兵士、落ちた剣、それらが踏み荒らされ、血の赤と泥の黒に染まっている。
廊下の向こうには、迫り来る炎が見えた。
思わず立ちすくんだミーシャの手を力強く引いて、ジュードが炎とは反対方向へ走り出す。
ミーシャはこけそうになりながらそれに従い、走った。
どこをどう進んだのか、生まれてからずっと、15年も住んでいた城なのに分からない。
気がつくとジュードが廊下の一角にある壁の下部を蹴りつけ、小さな扉を押し上げていた。
扉の向こうには、真っ暗闇の中下へ下へと階段が続いているのが見える。
「さあ、早く」
ジュードがミーシャの背を押し、中へ急ぐよう指示する。
扉は、小柄なミーシャが小さくかがんで入るのがやっとという大きさだ。
中へ入ってしまえば天井は高く、横幅も広くなるが、体格のいいジュードはとても入れない。
「いたぞ!あそこだ!」
廊下の向こうから声が上がるのが分かる。
ミーシャは扉の外に未だ立つジュードへ声をあげた。
「~ジュード!」
「ミーシャ姫、これを」
言って、ジュードが何かをこちらへ放る。
──ジュードが予備に腰に下げていた、剣だった。
「ジュ…」
「いつか兄君たちと同じように剣の鍛練をしたいとおっしゃってましたね。
お教えすることは叶いませんでしたが、あなたにそれを。
その剣があなたの身を守ってくれることを祈っています。
──どうかご無事で」
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