序章 1 ミーシャ

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ぞくり、とミーシャの胸の内に不安が押し寄せる。 この姿はまるで、これからのミーシャの姿を予見しているかのようだった。 悲鳴を上げそうになるのを押さえて──ミーシャは静かに、問う。 「──あなたは……一体、どこの誰だったの……?」 答えがないことは分かりきっていた。 けれど、パニックを押さえる手助けにはなった。 「…………」 無論、答えはない。 けれど。 かたん、と音を立てて、何かが地面に落ちた。 ミーシャは、そっと屈んで、その“何か”を拾い上げる。 それは、錆び付いた何かの鍵のようなものだった。 鍵とは言っても、普通の形状の鍵ではない。 ミーシャが見たこともないような、何かの鍵だ。 鍵にはキーチェーンがついていて、先に平べったい金属製のタグのようなものがついていた。 「──『ダルク・カルト』……?」 金属に掘られた文字を、指先だけで辿って識別する。 「ダルク──」 男の名だろうか。 なぜこの人は、こんな所で力尽きることになってしまったのだろう。 ミーシャは──そっとその鍵を骸骨の横に戻し、手を合わせると、剣を抱えたまま再び歩き始めた。 「──名前だけ、もらわせてね」 そんな言葉を、後ろの骸骨にかけながら──。
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