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『好きだ』なんて、絶対に言わない。
初めて出会ったのは、中学1年生のとき。
あのときはまだアイツ・・・松原結斗(マツバラユイト)は俺・・・人見千早(ヒトミ チハヤ)よりも背が低くて。
少し茶色の髪や瞳、穏やかな笑顔、落ち着いた話し方。
誰に対しても平等で、自分よりも周囲を優先できる優しさはそのままに。
互いの呼び方が名字から、気付けば『ユイ』『チハ』に変わり。
高校2年生になった今、身長175cmの俺は183cmのユイから見下ろされるようになっていて。
友情はいつの間にか、俺の中では『恋愛感情』に形を変えたけれど。
想いを伝えたら、あっさり2人の繋がりは壊れて無くなる・・・くらいなら、まだいい。
この優しい男友達は、俺を傷付けることを恐れて悩んだ挙句。
『ありがとう。俺も好きだよ、チハ』
そう言って、微笑んで。
俺を受け入れようと頑張って、努力して・・・結果俺の想いの重さに押し潰されそうになっても、それでも平気なフリして笑う奴なんだと、わかっているから。
ユイに対する感情は心の中に閉じ込めて、自然に消えて行くのを待てばいい。
そう決めているのに。
・・・どうして、想いは募るばかりなんだろう。
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