97人が本棚に入れています
本棚に追加
消えた? 真朱が消えた……。
床にはさっきまで真朱が身につけていた衣類が落ちていた。
真朱だけが消えたのだ。
「そんな……あまりにも突然すぎる」
瑠璃はへなへなと力が抜けて、床に座り込んでいた。そして、床の真朱の衣類に触れた。
まだ肌の温かみが残っていた。
そう、さっきまでここにいたのだ。これを着て、シアンの隣に座り、笑顔を向けていたのだ。
それが突然、消えてしまった。
「私……さようならって言ってないよ。まだ、お別れを言ってない」
ボロボロと涙があふれてくる。
「ちゃんとお礼も言ってなかったんだよ。なんでこんなに急にいなくなっちゃうの。真朱ちゃん」
涙がどっと溢れ、何も言えなくなっている。しゃくり上げ、肩が震えた。
紫黒がそんな瑠璃を抱きしめてくれた。
烏羽たちも突然の真朱の死に、戸惑い、悲しみに暮れていた。
この日がくることはわかっていた。それもそう遠くないことを。しかし、こんな状態で突然、消えてしまうとは思ってもみなかったのだ。
「瑠璃、そう悲しむな。王妃の水晶玉の力が尽きたのだ。そんなに泣くと真朱が瑠璃のことを心配してここを離れられなくなる」
シアンがやさしい声で言う。
「でも、シアン様」
「真朱は瑠璃のおかげで最期に王妃として過ごすことができた。毎日が楽しいと言っていた」
涙が飛び散るほどに瑠璃は首を振る。
「私の方こそ、真朱さまには助けてもらったんです。本当に私の方がもっともっとお礼をいわなきゃいけなかったのに」
「真朱はわかっている。充分伝わっていたよ」
シアンはそう慰めてくれた。
最初のコメントを投稿しよう!