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真朱がこの世を去った。
シアンの予告通り半年間生きた。
その最期は王妃の水晶玉の光が尽きるかのように消えていった。
国葬として弔われた。
お棺の中には、最期まで来ていた衣服と、真朱が最後の時まで手掛けていた刺繍の布が入れられた。
真朱は、精一杯生きた。瑠璃はそう、自分に言い聞かせている。
しかし、昨日まで居室に座り、笑顔を見せていた真朱はもういないと思うと瑠璃はまた涙していた。
真朱という女性はもういない。真朱がいなくなり、瑠璃は後宮にいる必要がなくなっていた。キャンベルリバーの家に戻ることになった。
紫黒は王についているから毎日帰っては来ないが、なるべく戻ってくるようにしてくれた。
瑠璃は大体一人で家の掃除をして、家畜の世話、菜園の手入れをして過ごした。
何かしていないと真朱のことを考えてしまうからだ。振り向けばそこにいた人がいなくなった空虚感は何ともいえない。
いつかはそれを乗り越えなくてはいけないとわかっていてもその胸は痛かった。
瑠璃はシアンのことも考える。
シアンもそう長くはないと自らそう告げている。
真朱を失った悲しみを再び味わうのかと思うと、それも恐ろしくてたまらなかった。
そんな時、真朱の母、紅桔梗が言った。
「瑠璃さん、私達はまだこの世に生きている。前を向いて歩きましょう。真朱様のことを振り返るのはいつでもできるのです。だから、とりあえず前に進みましょうよ。真朱様もそう望んでおられると思います」
紅桔梗のその言葉は、瑠璃の心に終止符を打ち、前向きに考えられるようになった。
やっと空を仰ぐことができた。
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