97人が本棚に入れています
本棚に追加
それから数か月が過ぎた。シアンが起きられなくなっていた。
長時間起きていると胸が苦しくなるという。政(まつりごと)も横になって行っていた。
三人の守り役が常に側にいた。
「孫のようなシアン王まで看取ることになるとは、長生きをしていいのか悪いのか」
「まったくじゃ。こんな老いぼれにこのような大役を強いるとは」
「しかし、先に逝っても心配で、後ろ髪引かれる思いになろう」
三人は代わる代わるそんなことを口にしていた。
ある夜、紫黒と瑠璃がシアンの寝室に呼ばれた。
最期の別れだった。
二人が入室すると、三人の守り役が遠慮して、部屋から出ようとしていた。しかし、シアン王はそれをとめる。
「よい、三人にもここにいてもらいたい。それと烏羽も呼んでほしい」
烏羽はすぐ外の廊下にいた。神妙な面持ちで入ってくる。
「皆の者。よく聞いてほしい。わたしは今から転生することを宣言する」
守り役たちが膝まづく。
烏羽と紫黒も同じ体制をとった。瑠璃も慌てて床に膝をついた。
シアンがもうすぐこの世を去る。
王は自分の転生するところ、生まれ変わった自分を産む両親を知っている。
それを今から発表し、産まれたらその子と両親を王宮内に保護することになるのだ。
「紫黒、瑠璃、おめでとう。瑠璃の中に新たなる命が授かっている」
「ええっ」
紫黒が大声を上げた。
「え、まさか」
最初のコメントを投稿しよう!