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瑠璃は、昨日あたりからもしかすると妊娠しているかもしれないと気づいていた。
来るべきものが遅れているし、胸のあたりがちくちくしたり、眠かったりするのだ。けれどまだ、診療所へ行って確認していないから、誰にも言わないでいた。
「そうなのか」紫黒が瑠璃に聞いた。
「うん、まだ確かじゃないけどね。たぶん、そうだと思う」
紫黒が破顔した。
「まじでっ。シアン、それは男か女か、シアンにはわかるんだろっ」
紫黒はまるでシアンが占い師のような口調で尋ねた。
シアンはにっこり笑う。
「もちろん、男の子だ。それもものすごくかわいい利発な子になる」
それを聞いた紫黒は、ヒャッホ~と小躍りしそうなテンションだった。
瑠璃はもう少し冷静だった。
なぜ王は、このタイミングでそんなことを言うのだろうか。
もしかしてもしかするかもしれないと、考えていた。
「わたしはもうすぐこの世を去るが、瑠璃のお腹の中にいる子供として転生する」
シアンがそう言った。そのとたん、紫黒の動作が凍結していた。
「今、なんてった? おい、まさかだろっ。シアン、冗談だよな。オレの子供に転生しようっていうのか」
シアンは紫黒の反応がおかしいのだろう。
くすくす笑って肯定した。
「そう、紫黒の息子に生まれ変わる。よろしく、お父上さま」
紫黒は絶句していた。
瑠璃も驚いていたが、すぐにそれを受け止める。
お腹の子供に王の魂が入るのだ。
こんなに光栄なことはないと思った。
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