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「じゃねー、また来週!」
彼女はやっぱり帰り道でも元気に手を振って、鮫のことは忘れているようだった。
散々話を聞いてクタクタになって帰ってきてお風呂に入る時、洗面所の鏡にうつる鮫にも勝てそうにない貧相な身体を見ても、だからなんだ、という風にしか思わなかった。
ゲイの友達に押し付けられた石鹸は、大層な中身の分からない箱に入ったまま蛇口のわきにおいてあって、たぶん、僕は顔を洗うときにでも、それにふと鼻先を近づけた時にだんだんと漂ってくる匂いを吸い込みたくなくて息を止めるのだろう。
鮫なんて強い生き物じゃないけど、人間だってそれくらいで気が滅入ることだってある。
大人しく、怖いのを我慢して、すまし顔でお風呂に入らなきゃいけない時。
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