終わってしまった世界の話

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とはいっても、死んでしまったのは仕方ないことだ。 滅多にない体験なので、折角だから自分の身体を外から眺めてみようと思い立った。 俺は「ふらふら」と人工的にコンクリートで固められた崖を道づたいに下った。 随分とショートカットしたもんだ。崖下はやけに遠く感じた。 今、「ふらふら」と表現したが、実際には「ふわふわ」と浮きながらの移動だった。 死ぬ前も「ふわふわ」としたもんで、人は俺を「ちゃらんぽらん」だとか「ろくでなし」だとか「ふわふわとしたやつ」と呼んでくれた。 しかし、俺は前向きで、緩やかで、のびのびと生きてきたと自負している。 だから、このことも前向きに考えて、他の人はしない体験をしてると考えることにした。 さて、俺は担架が救急車に乗ったのを見届けると、改めて、「ふわふわ」と「ふらふら」と散歩をすることにした。
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