終わってしまった世界の話

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「誰かいるの?」 ゲコは鋭く言う。 絹糸のような長い黒髪に、ビン底眼鏡、丸顔で愛嬌のある顔は涙でぐちゃぐちゃだった。 毎回思うが眼鏡がなければ、可愛い顔をしているのに、残念なやつだ。 「おれ、おれ」 ゲコは眉をしかめ、辺りを見回す。 「だれ?」 どうやら見えていないらしい。 「えーと……ヨコヤマだよ」 「だれ?」 どうやらゲコは俺の名前を覚えていないらしい。 ゲコはソファの後ろを見たり、クッションを裏返したり、マイクがないか探しているようだ。 「えーと……ほら、お前、俺のこと、ちゃらんぽらんとか呼んでるじゃん」
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