鏡に映る翡翠色の瞳

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「最悪だ……この世の終わりだ……」  ――俺は死ぬのか。ダメだ、死にたくはない。  このままだと濁流に?み込まれてしまう。  どこもかしこも水、水、水。すべてがこの濁りきった水の底に沈んでしまったのだろうか。もがいたところで何も変わりはしない。奇跡なんてそうそう起こるものではない。流れに身を任せていけば助かるなんてことはないだろう。あのうねり狂った水の化け物はきっと容赦をしない。それでも一縷の望みにかけてみたい。  ――どうして、こんな事態になってしまったのだろう。気づけば、濁流にいた。おかしなこともあるものだ。何かが変だ。それが何なのかよくわからないが、変だ。  彰俊は、どこか違和感を覚えた。  濁流に呑み込まれようとしているはずなのに、現実味がない。なぜだ。死と直面しているこの状況に置かれてもなお冷静でいられるのはなぜだ。流されている。この恐ろしい大自然のうねりの中に間違いなくいる。なら……。  あ、音だ。聞こえるはずの音がない。うねり狂う水の音がない。無音だ。それだけじゃない。  冷たさ、水の匂い、流れる音、何も感じない。  もしかしたら、これは夢なのか。けど、そう思い込みたいだけかもしれない。冷たすぎてすでに感覚が狂ってしまっている可能性だってある。匂いも音だって、感覚が麻痺してしまって感じないだけかもしれない。あるのは視覚だけ。いや、思考も問題ない。それは、やはりおかしくはないだろうか。  わからない、わからない、わからない。  ただ、わかることと言えばこのままではやがて死ぬということだ。  ダメだ、このままでは。そういえば、身体が動かない。かなり衰弱しているということか。  波打ち荒れ狂う水の流れに木々が勢いよく流されていく。泳ごうにも流れが激し過ぎてどうにもままならない。流れる木々に掴まることが出来れば少しは違う気がするが、無理だ。身体がやはり動かない。まるで身体事態がないんじゃないかと思えるくらい感覚がない。
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