苦さと甘さと。

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グルメ番組大好き。 食べ歩き大好き。 食べること命。 俊太の嫌いはすべて、真美の大好きなのだ。 だから、俊太の嫌いな奴はどんぴしゃで真美にあてはまる。 「ほんと、食べることより楽しいことたくさんあるのにさー。食べることばっかに意識いってる人って、軽蔑だよねー」 自分のこと、軽蔑しちゃってんじゃん。 真美は心の中で自分にツッコミをいれつつ、そう言ってウイダーインゼリーを飲み干した。 本当はちびちび味わって吸いたかったけど、 食べることなんか本当はめんどくさいだけだもんねー、という素振りをみせるために。 そんな生活を続けていた真美は、どんどん痩せていった。「肉まん」っていうかあだ名がついていたなんて嘘みたいに、頬がこけ、健康的すぎる印象が、寒さに弱い病弱な人にしかみえなくなっていた。 今の真美は、コンビニのほかほかな湯気立ち上る肉まんの前に立っても、売り上げUPに貢献しないだろう。しないどころか、その病弱な印象は、営業妨害になりかねない。 真美は嫌われないように、とにかく俊太に合わせた。こんな恋は初めてだった。 今までの彼の中には、食べ歩きに強引に連れていき、彼をブクブク肥らせたこともあった。 食べることの楽しさを、彼にも強制し、次第に彼も食べることが大好きになった。 食べること命!を共有することが出来たのだ。 だが、今目の前にいる俊太にはそれが出来なかった。 彼の世界観の中に、私が入ってはいけない。私が彼の世界観を壊してはいけない。 だから、彼に従わなきゃ。 そうしないと嫌われる、捨てられる。 その恐怖は、真美から食欲を奪っていった。 あんなに食べることが大好きだったのに、恋って怖い。 真美は鏡にうつる痩せこけた自分の顔をみながら、 いつフラれてしまうかわからない恐怖におびえていた。
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