苦さと甘さと。

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「他に好きな人ができたから別れてよ」 俊太は真美に悪びれることなく、別れを告げた。 あんなに俊太に嫌われないように、 頑張ったのになんで?なんで?なんで? そればかりが、アタマの中を ぐるぐるかけめぐるのに、 「そっか、そうなんだ。 仕方ないよね」 真美はそう、口にしていた。 なんでなのよ、そんなの許せるわけないでしょー! そう言って狂って、 俊太にそこらじゅうのものを投げつけられたら、 どんなによかったことか。 なのに、真美は俊太に微笑んでいた。 「元気でな。真美にはもっといい男がいるよ」 昔のテレビドラマの臭いセリフを、 しらっと言って俊太は真美の前から去っていった。 食べること命、 を封印していたのに。 ウイダーインゼリーちびちび吸って、 こんなに痩せこけたのに。 自分を押し殺して、 俊太のことだけをみていたのに。 嫌われないように、 嫌われないように、 必死だったのに。 なのになんで、こんなことになっちゃったんだろう。 その日から真美は寝られなくなった。 夜、ベッドの中に入ると、 俊太の顔が浮かんでくる。 あの日、俊太にあぁ言ったことが悪かったんじゃないか。 俊太を失った虚しさや、 取り返しのつかないことをした 後悔が押し寄せてきて、 目がどんどん冴えていく。 そんな真夜中が真美にはつらすぎた。
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