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「あれは演技よ。目つきがキツイと嫌われるの。翔も私のときは出来るだけゆるい顔してよね」
「目つきがキツイだけで嫌われる?」
「女子って大変なのよ」
「まあ、男でも睨んだら、ガン飛ばしたって絡まれるもんな」
「でしょ。女子は陰口叩かれるから」
「じゃあ、俺も、遥に近づけなきゃな。こんな感じか?」
翔は顔の筋肉全体を思いっきり緩め、白目をむいて、口をだらしなく開けた。
「ちょっと、やめてよ。それじゃただのバカじゃない。もっとかわいくして!」
「じゃあ、こうか?」
翔は視線を斜め上にして、舌を少し出した。
「ちがーう! 逆に誰も声かけなくなる!」
「注文が多い……。じゃあ、こうか?」
今度は斜め下向きにして、呆けた顔を作った。
「やめてーー! そうじゃない!」
「ほんと、うるさい」
「可愛い顔を作ればいいの! 口元は締めて! 口角上げて! 目を笑わせて!」
表情がまとまらなくなった。
「あ、あれ? 注文が多くて、分からなくなっちまった」
「まず能面つくって、一つずつやっていきましょ」
深夜0時に魂が入れ替わるまで、翔は遥のダメだしを受けながら、敵をつくらない表情を特訓させられた。
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