恋は盲目というけれど

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翌朝、いつものように葵が私を迎えに来た。きっと葵の顔、見えるようになっているはず。私はふうと息を吐き、玄関のドアを開けた。 現実は残酷だというけれど、本当にその通りだと思う。目の前に立つ葵の顔は黒く塗りつぶされていた。 「華月、大丈夫?」 葵が心配そうな声で言う。多分ひどい顔をしてたんだろう。 「だ、大丈夫だよ。行こっか」 私は葵に心配させまいと、頑張って笑顔を作り彼に向けた。 嫌だ、なにこれ、怖い怖い怖い。大学に着いた私と葵は講義室で講義を受けていた。この講義はどの学部の人でも受けられる、いわゆる共通科目だから受講している人数も多い。こんなにもたくさんの人がいる中で私は葵を分かることができるんだろうか。顔が分からない、声も曖昧にしか分からないのに。葵が私の方に来てくれなかったら分からないんじゃないだろうか。ずっと一緒だった葵のことが分からなくなるという不安に苛まれ、講義の内容なんか一つも耳に入らなかった。
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