恋は盲目というけれど

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葵が言った症状はまさに私の今の状態そのものだった。ということは私は葵のことが好きすぎて顔が見えなくなったってこと? そう考えたら急に恥ずかしくなって、私は顔を真っ赤にしてうつむいた。 「ねえ、華月。俺の顔が見えなくて不安なら、俺のこと好きじゃなくなればいいよ」 そうすれば、また俺の顔見えるようになるから、葵は少し震えた声でそう言った。 「……そんなこと、できるわけないじゃん。なんでそんなこと言うの!」 私は勢いよく立ち上がると、葵の前に仁王立ちした。 「確かに葵の顔が分からなくなるのは怖いよ。でも、それは葵のこと好きじゃなくなる理由にはならない」 葵の黒く塗りつぶされた顔に手を添え、私は葵の頬の辺りに口づけた。 「私が葵の顔分からなくても、葵が私のそばにいてくれるなら大丈夫」 そう言って私は葵に微笑みかけた。 「……華月にはかなわないなあ」 葵はそういうと私の唇にキスをした。 「仕返し」 「顔が見えてるからってずるい!」 さらっと私のファーストキスを奪った葵に抱き着き、私は葵とのこれからに思いを馳せていた。 思いを募らせると世界から色彩が消える病にかかった俺の世界にはもう白と黒しか残っていない。神様、どうかもう少しだけ。俺の世界に白色を残しておいてください。 抱き着いてきた華月の頭を撫でながら俺はいるかどうかも分からない神様に祈っていた。
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