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玉城が一時的に借りている大東和出版の社員寮から、電車を乗り継ぎ45分。
JRの終点からバスで10分、更に歩いて8分の住宅地にリクの借家があった。
そこに向かう途中にある街路樹はいつも鮮やかな木の葉を揺らし、サワサワと心地よい木漏れ日を落とす。
玉城はその道を歩くのが好きだった。
2カ月前からリクが移り住んでいるその家は、かなり年季が入ってはいるが、ログハウス調で可愛らしかった。
ダミーの煙突、とんがった屋根。それらを囲む塀も門もない。
リクを気に入って放さないあの画廊のオーナーの所有物らしい。
両隣に家は無く、後ろは自然公園とは名ばかりの雑木林で、そこをさらに分け入れば、鬱蒼とした山間部に繋がる。
気まぐれに住む場所を移すリクもこの場所は手放せないんじゃないだろうかと玉城は思う。
ひと気のない公園を過ぎ、空き地の横のその家の前に立った玉城は、ポスト横のドアホンを押してみた。
しばらく待ったが反応がない。
留守なのだろうか。ドアレバーを引いてみる。
カチャリと軽い音を立ててドアが開いた。そっと首を玄関に突っ込んでみた。
木の香りがする。
そして高校の美術室のような、絵の具と木炭の懐かしいにおい。
天上の高い、吹き抜けのリビング。ロフト部分まで見渡したが人の気配はない。
主の名前を呼んでみる。
反応はない。
玉城は少しムッとした顔でドアを閉めた。
「あのバカ、また鍵も掛けずに出かけてる!」
何十回注意したか分からない。
人として生活するなら、とりあえず鍵は掛けて出かけろと。
玉城はくるりと家に背を向けると、管理能力ゼロの野生児を探しに行くことにした。
彼が居るところなら見当はつく。
鳥を探す事に掛けては随分腕をあげた。
玉城はそう自負していた。
◇
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