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「ねぇ玉ちゃん。やっぱりごめん。あのお守りさあ……」
そう言いかけたリクをカシャリとまたファインダーに収めた後、玉城が「何?」と訊いた。
「あのお守りさあ、やっぱり効かないと思う」
「え? 何で?」
玉城はカメラから顔をあげた。
「あのお守りはずっと玉ちゃんが持ってるんだよ」
「へっっ?? 俺が?」
「うん。貰ったあの日、玉ちゃんのバッグのポケットに押し込んだから」
「えーーーっ。そうなのか? ひっでぇーーー!」
玉城は足元に置いてある黒いショルダーバッグを持ち上げてサイドポケットを探った。
「あった!」
「ね?」
「ね? じゃないよ。酷いなあ、人の親切を」
「ごめんごめん、僕より玉ちゃんの方が必要かと思って。つい」
「俺はそんな体質じゃないんだって。しつこいなあ。……あ。でもさあ、俺の方こそ何もあっち系の人とか出てこなかったんだから、やっぱりお守りは効いたってことだろ?」
そう自慢げに言ってまたカメラを構える玉城。
リクは真っ直ぐにファインダーの向こうの玉城を見て、優しげな表情で言った。
「……そうだね。うん。真実を知ることがすべてじゃないもんね」
ちょっとよくわからないセリフだと思いつつも、気にせずに玉城は、今日一番の柔らかいその表情をカシャリと捉えた。
「よし、バッチリだ。俺って絶対カメラマンの才能もあるな。リク、次号はさらに期待しててくれよ!」
「どうでもいいよ」
満足げにはしゃぐ玉城を見ながら、リクは溜息混じりに呟いた。
◇
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