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絶対に登りつめてやる。
あの頃の自分はもう居ない。ここからなんだ。
須藤は拳を握りしめた。
「高田の小学校前のポスターに落書きされていたそうです。張り替えて貰うように手配しました」
「ああ、すまないね」
“きっと小学生だ。クソガキめ。”
一瞬心によぎった汚い言葉を押し込めて、須藤は穏やかな調子で答えた。
自分を見つめている自身のポスターには「子供達の明るい未来のために」と書かれている。
電話のベルが鳴る。
ファックス用の回線だ。すぐにファックス独特の電子音が鳴りはじめ、受信を開始した。
須藤の顔が青ざめる。
席を立とうとしたスタッフを「あ、いいよ」と作業に戻らせて須藤はファックスに近づいた。
平静を装ってはいるが須藤の腹の底はすでに怒りで煮えたぎる予感に満ちていた。
“またあのファックスだ!”
ピーッという終了音と共にファックス用紙を引き抜き、チラリと見て眉を顰め、それをシュレッダーにかけた。
その場にいるスタッフに見られていないのを確認すると須藤は少しホッとした。
けれどもその苛立ちは収まらない。
発信してきた人物がもしもこの機械の中に居るのだとしたら須藤はすぐさま叩き壊していたに違いない。
自分以外の人間にこの文面を見られたら、と思うと、それだけで胃が痛んだ。
たった一枚の紙切れに踊らされることが情けなくて腹立たしくて、気持ちのやり場が無かった。
“……あのクソガキめ!!”
須藤はスケルトンのシュレッダーの中に細切れになって排出されるファックス用紙を、血走った目で睨みつけた。
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