この世の終わりのようなカンケイ(仮)

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「怪我したんです、一昨日」   オレの質問にミヤコちゃんはそう答えた。 「アタシの花にたかる害虫がいたんで、×したんです。そしたら、思わぬ反撃にあいまして」 ぱさっ。   話をやめる事無く、彼女は羽織っていたコートと、ブレザーを脱ぎだす。 「見て下さい、コレ。酷いでしょう」   彼女はシャツの右腕と羽織ったカーディガンを一斉に捲くった。  「へぇ、ここらにはGだけじゃなくてそんなに大きくて危険な虫がいたんだ。オレもこれから気をつけないとね」   オレはミヤコちゃんの右の指先から肩の付け根までを覆う包帯を見て、率直な感想を述べた。   その色は清潔な純白とは縁遠い、くずんだ赤斑色をしていた。 「それは大丈夫だと思います。アタシの×したあの一匹しかいないんで」   そう、この世に一匹しかしないアレを確実に×したハズなんです。 「なのに、あの子はそれを見たと言ったんです」   そんなハズ絶対にないのに。 「これで、あの子はアタシだけを見てくれるハズだったのに」 「‥‥‥ねえ、ミヤコちゃん」   オレは雑誌を捲るのをやめ、今度はそれを丸めて弄んだ。 「例えばオレが“昨日蝶を見た”って言ったら、君はどこで見たって想像する?」 脈絡のない質問に、彼女は怪訝な表情を浮かべ、しかしすぐに河川敷とか、公園とかですかね。と答えた。 「それも、あるね」 「他にあるんですか」 「もちろんあるさ」 オレは彼女の足下に手元の雑誌を放った。   投げられた雑誌は、裏表紙の“アニメーション・漫画・特撮博物館 近日オープン”という広告を上にして力なく床に舞い降りた。 「妹は率直に見たものを見たといったんだ。君の望む答えが欲しかったのなら生きているソレを見たのかと尋ねるべきだった。君のミスだよ」 オレの妹はね、えてしてそういう人間なんだ。
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