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「‥‥‥貴方は、どうしてまだあの子を×しないんです。彼女にはもう、人質としての価値はないはずでしょ」
「っぷ。っははははは」
ここまできて、あまりにくだらない質問に、オレは膝を叩いて笑った。
「オレが端からあいつを人質どころか、人として見ていないなんて、分かってるだろ。君なら」
オレを見据える眼鏡の奥の彼女の瞳に、オレも焦点をあわせる。
「オレはただ確かめたいんだ。アレがこの規定された社会でどんな風に成長するのか」
目の前の彼女の眼には、恐怖も、怒りも、悲しみもなく。
ただどうしようもなく濁っていた。
オレと同じように。
「共感できるハズだ。君なら」
あの子の在り様に魅せられた君(狂乱者)なら。
「‥‥‥さて、話は変わるんだけど。最近妹が姉が欲しいといってきかないんだ。どうしたらいいと思う?“ミヤコ”」
彼女は視線を伏せて、
「最悪ね」
「ああ、世も末だ。この世に終着点があるならまさしくここだろうさ」
けどね、
「そんなこの世の終わりみたいな状況で、自分がどんな顔をしてるのか分かってるかい?」
再び視線を上げた彼女は、どうしようもないキョウキに満ち満ちていた。
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