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「子供は大抵そう言い返すのよ」
「うっさい」
「もうっ、相変わらずツンデレなんだから」
「ウチはツンデレじゃないよ」
「髪型をポニーテールにまでしておいて?」
顔を少し机から浮かせ、腕の隙間からミヤコの顔を盗み見た。
頬の上にほどよくそばかすを残したミヤコは、その鼻先にのせた眼鏡のレンズ越しで、心底意外そうにウチを見ていた。
その覗き込んでくる視線が妙に熱っぽく思えたのは、彼女がウチをからかうことに対して、文字通り普段から熱を入れているからに他ならない。
「それ、なにか関係あるの?」
「なにかってそりゃあ。ツンデレっていったら昔からツインテールかポニーテールって相場が決まってるでしょ。ツインテなら金髪、ポニテなら体育会系がデフォね。ああ、妹属性はどっちでもオーケーよ、もちろん」
ちょっと、何言ってるかウチには分かんないです。
「ツンデレじゃないとすると、あとはヤンデレ?」
「ヤンデレ?」
聞き慣れないワードに、ウチの両耳がピクっと反応する。
「うーんと、要するに愛が重い女の子の俗称、みたいな?」
「なにそれ。どういうこと?」
「“あの子、貴方に色目使うから殺しちゃおうかなぁ”とか、“一生、この手離さないから”とか真顔で言ってくる。みたいな?」
うぇ、ほんとなにそれ。
「苦虫噛み潰した顔してるけど、その界隈じゃそれなりに人気のある属性なのよ?ただし、二次元に限るけど」
「そんなの流行ってるなんて、世も末ね」
「そう、まさに“この世の終わり”ってね」
人の台詞に勝手にオチをつける行為は控えていただきたい。
「まっ、言ってみただけよ。カレシと上手く行ってるあんたにはヤンデレとか関係ないものね」
「か、彼氏って」
びくんっ。
ウチの背筋が、エビのように瞬時に伸び上がる。
椅子の背もたれにぴちっと背中を貼り付けたウチに、あんたって、分かりやすいわよね。とミヤコは意地悪な笑みを浮かべた。
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