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「あんたの隣の家で、隣の席の、一昨日の月曜からインフルエンザで学校を休んでる、両親が海外出張で絶賛一人暮らし中の、シンヤくん」
ウチの背後に回ったミヤコは、ウチの腰に腕を回して、右肩に自分の顎をのっけた。
ぴとり、と彼女の左の頬がウチの右の頬に吸い付く。
火照って上昇したウチの体温が、ひんやりとしたミヤコに流れていく。
ミヤコはウチの体に巻きつけた右手の人差し指で、ウチの体をなぞった。
ふともも、腰、脇腹、わきの下、少し戻って胸、最後に鎖骨を通って首筋に止まり、
「最近あんたがブルーなの、もしかしなくてもシンヤくんがらみでしょ」
さも当然のように、そう告げた。
掌の汗が、一瞬で冷めたように錯覚した。
「どうやら正解みたいね」
したり顔のミヤコの瞳は、爛々と鋭い光を放っていた。
「アタシが相談に乗ってあげるから、話してみ」
「べっ、別にシンヤどうとかっていうわけじゃ‥‥‥なくはないんだけど。その‥‥‥‥」
「言い出しづらいのはわかるかるし、言いたくないトコは省略したりぼかしてくれたりしていいからさ」
ウチの身体がミヤコから開放され、そこにあった人肌の感触もまた、夢のように霧散した。
ミヤコはシンヤの席じゃない、窓側から三番目の最後尾、ウチのもう一方の隣の席にかけて、スカートから伸びた細くて白い足をウチの方に放って腰掛けた。
その拍子に彼女の肩まで伸びたお下げがふた房、夕日をまとって煌きながら揺れた。
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