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シンヤの方が?
「シンヤなら大人しくベットで寝てたけど」
当日のシンヤの部屋での様子を思い起こす。
シンヤは寝息もたてずに、文字通り安らかに眠っていた。
変わっていたといったら、布団の模様と、壁に貼ってあったポスターくらいかな。あと、部屋も少し汚れてたかも。
「それからちょっと気分が盛り上がっちゃって、シンヤを連れ出したの。シンヤはパジャマ姿だったから近所の人に見つかって、ビックリされないか心配だったけど。ほらだって、見つかったらなにやってんだって怒られちゃいそうじゃない?」
あはは、とウチはおどけてみせる。
「ねえ、その話。他には誰が知ってるの」
「うーんとね、お母さんとミヤコ。ああ、あとお兄ちゃんかな」
そう。ウチにはミヤコ曰く“妹萌え”の2つ上の寡黙なお兄ちゃんがいる。
兄の愛情表現は、少々過ぎていると思うこともままあるけれど、いざという時とても頼りになる人物で、昨夜もお母さんが出て行った後でやってきて、ウチの部屋を眺めて事情を察したのか「オレがなんとかしてやる。任せろ」と言ってくれた。
今朝、特段食卓の話題に挙がる事もなく登校できたのは、兄が火消しに尽力してくれたからに他ならない。
「他には誰も知らないよ」
絶対に。
「‥‥‥そっか」
ミヤコは悟ったように深く頷いた。
「こんな予想は当たって欲しくないんだけど、当たってるんだとしたら。‥‥‥すでに手遅れなのね。あんた」
ミヤコは、どうしてか何かを哀れむような哀しい瞳で。
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