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「この度、私の卒業論文の発表の為にこのような機会を設けていただきまことにありがとうございます」
と、短くもぎこちない挨拶が魔法医学院大学のホールに、魔力拡声器から響き渡る。
カルナ=サハラによる第百九十六回魔法医学院大学の卒業論文の発表が始まるところだ。
カルナは一息置き、再び顔をあげ、口を開いた。
「大魔術法則性世界ーー通称、魔法世界と呼ばれる我々が生きるこの地に大魔術法則、つまりは魔法が創造されたのは今から2万年前です。当時、天才奇術師と呼ばれたバルム=ネイガーが、神話より言い伝えられている禁断の果実を食したことに始まると言われています。《イヴ》から氾濫した魔力が地球上のあらゆる生物へと感染。そして、感染した旧人類から繁栄していった我々子孫にも魔力が引き継がれ、現在の我々の生活に魔法は無くてはならないものとなっております。その魔法の源、魔力には属性が幾つかあり、ほとんどの人間はどれか一属性しか使えません。生まれながらの魔力の質によって決まっているからです。そして、魔力が与えられたのは人間だけではありません。《イヴ》は陸上の動物から海獣まで、言葉通りあらゆる生物に魔力を与えました。脆弱な器を持つ生物は魔力に耐え切れずその瞬間に絶滅。今生存する虫や魚、動物、そして人間はその魔力を潜在的に掌握できた種です。すなはち、現存する生物は皆等しく魔力を保持しているとなります。しかし、その生物のほとんどは魔力の使い方がわかりません。本能的に生きる彼らに魔力を使用するという思考は持ち合わせていないからです。魔力が使えるのは 人間と、そして魔力の順応により進化、変化した獣人類のみです。ーーでは、ここまでを導入とし本題へと入らせていただきます。私がこの度研究テーマへと選んだ題材はこちらです」
カルナの背にある巨大スクリーンに、魔術映写機から映し出される画像を指した。
そこに映ったのは彼女の研究テーマ。
そのテーマの名は《エニグマ・サイン》。
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