1章 山賊戦線

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ーーー 「全く、先輩はどうしてこうなってしまったんでしょう」 片手にクラウンからもらった(献上された)人参を持ちながらぶつぶつと文句を垂れる。 「人参あげたんだからもう文句はやめろって」 「私がやめたのはあなたのギャンブル癖についての文句です。今文句言ってるのは先輩の変わり様ですよ。大学院生の頃は真面目すぎるほどに真面目だったのに~!」 ハルは手に持つ人参を加えながら頭をかきむしる。 「いや、大学院生の頃は猫をかぶっていたんだよ。教授達に媚び売ってね。おかげで単位を取るのも楽だったし、大学院ライフを過ごしやすかったよ」 「じゃあ、裏では…」 「ギャンブル」 「うわぁぁぁぁぁぁあああーーーーー!!!!」 ハルは口から人参を落とし、断末魔のような叫びをあげながらその場に項垂れた。 成績優秀、運動神経抜群、そして容姿端麗とモテる要素を全て詰め寄せた完璧超人と思っていた憧れの先輩が、まさかのギャンブラーという事実に気持ちが追いついていない。 「まあまあ、人間獣人類(ヒト)誰しも裏の顔の一つや二つ持ってて当たり前だろ?むしろお前と旅に出て早二ヶ月、よく我慢したもんだ」 「もう先輩には財布を貸しません!私が管理します!!」 ハルは人参を拾い、土埃をはらいながら怒鳴った。 ハルがクラウンを『先輩』と呼んだり『大学院生の頃』と言うのも、察しの通り、彼らが同じ大学院の先輩後輩の関係だからだ。 もちろん旅の目的は各々真意がある。 二人は目的に重きを置いて旅をしている。 しかし、 後輩である獣人類の少女が憧れの先輩である人間の少年と 種族を越えたハネムーン、という気持ちが無きにしもあらずだったハルは先輩の秘密を知ることで淡い希望が消滅し、精神的ダメージを負った。
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