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「少年」
少年は焼けたゴシップの
かけらを拾い集めて
母と父の名前をノートに形づくり、
微笑んだ。
少年は表通りを歩く夫人の隣で
赤い服を着せられた犬を見て、
彼は鏡の前でなにを思うのか
考えてみた。
少年は戦没者の墓を訪れた少女の隣で、
彼女の涙を
どうしたら止められるのかと
涙を流した。
少年は毎年、暑い季節に
日焼けのように心に焼きついた
怒りをどうしたらいいか
頭を悩ませた。
少年は街のイライラした空気に
袖を引かれる様な気がした。
少年は心踊る映画や、
知らない人生を教えてくれる音楽を
隣の少女にも見せてやりたいと思った。
少年は鏡を見た。
そうして少年は、
もう自分が少年ではいられないことに
ようやく気づく。
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