「少年」

2/2
前へ
/23ページ
次へ
「少年」 少年は焼けたゴシップの かけらを拾い集めて 母と父の名前をノートに形づくり、 微笑んだ。 少年は表通りを歩く夫人の隣で 赤い服を着せられた犬を見て、 彼は鏡の前でなにを思うのか 考えてみた。 少年は戦没者の墓を訪れた少女の隣で、 彼女の涙を どうしたら止められるのかと 涙を流した。 少年は毎年、暑い季節に 日焼けのように心に焼きついた 怒りをどうしたらいいか 頭を悩ませた。 少年は街のイライラした空気に 袖を引かれる様な気がした。 少年は心踊る映画や、 知らない人生を教えてくれる音楽を 隣の少女にも見せてやりたいと思った。 少年は鏡を見た。 そうして少年は、 もう自分が少年ではいられないことに ようやく気づく。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加