人生

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見知らぬ女の声が聞こえた 月の輝く秋の夜長 いつか感じたモノクロが 首をもたげてやってくる 誰かは忘れてしまった 言の葉を追う小童 夢中で指先に墨をつけ 内なる高鳴りを言の葉とし 拙くも勇ましく紙上に著した 輝かしき明日の為 未だ言の葉を追う若人 己にのみ許された表現を信じ 幼き時分に恥じぬよう 酔い腰ながらも日々を駆けた 夢砕けた疲れ人 追うた言の葉はもう見えず 懸けた道はもう消えた あまねく文字は彼を指し 嘲笑うかのように消えていく 傍に寄り添う言の葉はなく 手ずから酌した酔いのみ残る 何処から聞こえる女の声 どうしてそんなに楽しげか 病の床から見える月 どうしてそんなに美しい 言の葉を欲する老いた身は 握った筆の暖かさに涙する 綴れど綴れど満たされず 綴れば綴る程に満ちていく やがて病の床の老いた身は 可笑しくなって笑い出す かつて小童が追ったその言の葉 かつて若人が望んだその言の葉 かつて疲れ人が捨ててしまった言の葉 そして老いた身が掴んだ言の葉は この流れる命の道程にこそあったのだと
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