Prologue

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「諸君、キミたちが我々の仲間になってくれた事で、社長の 私としても何より心強く思っているところだ!」 すでに五分が経ち、まだ壇上の白髪男性は話しを止めようとしなかった。 キレイに並んだパイプ椅子に菅野タクマはずっと腰掛けている。 思わず緊張感が緩み、欠伸を始めて噛み殺した。 「……、これからキミたちの活躍が新しい風となり、青田グループを未新たなステージへと連れて行ってくれるものと信じている。健闘を祈る! そして入社、おめでとう」 会場となった都内のホテルで、今年の新入式は行われた。 真新しいスーツを着た新入社員、やく百名はこれから新しい一歩を踏み出す事になる。 「これで青田グループの入社式を終わります。係員の指示に従い、退場願います」 ようやく会場には安堵からなのか、咳払いやざわめきが聞こえてきた。 予め、新入社員は四つのグループに分けられていた。 本社の統括本部もある上野本店、新宿の新店、千葉の柏店、最後が茨城のつくば店である。 同じグループ会社ではあるが、その目的は別々で、上野は経営の中核となり、新宿は先鋭的、柏はロープライス、つくばはその立地を活かして倉庫管理も担っていた。 「上野本店のグループ!」 言われて立ち上がったのは、左前列に座っていた連中で、どことなくインテリ感を醸していた。 「新宿店!」 立ち上がったのは、男も女も見栄えがする。 彼らは普通にしているつもりだろうが、どこなく鼻についた。 「柏店、立ち上がって下さい」 大学でもキャンパスで見掛けた連中と変わりない。とは言っても、やはりあか抜けていた。 三グループが退場すると、急に会場は閑散とした雰囲気になった。 社長の青田も側近達と退場して行った。 「パイプ椅子を片しますので、ご協力下さい!」 つくば店に配属となる予定は、男女合わせて五人しかいない。 すでに手荷物を手にしていた連中から、不満が漏れ聞こえた。 「扱いが違うじゃん……」 「何ですか?」 三十代に見えた女が五人を見渡したので、みんなは口をつぐんだ。 「あとはホテルの係員から指示を受けて下さい」 オマケにその女さえも退場してしまった。 男は二人、女は三人、みんな野暮ったい雰囲気だった。
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