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四人の話し声が意識から遠くなっていた。
タクマは車窓の景色を眺めて、茨城に帰って来たなと感じていた。
かつてつくば万博が開催されて、つくば市の中心部は街が開けた。
と言っても、それは本当に街の中心部で、少し離れると田園が広がる長閑な景色が沢山残っていた。
「倉庫勤務か店舗勤務か、大きくない?」
三人いた女子の中で、一番背の高い野山サヤカが言った。
「それある。今日、言われるのかな?」
「男は倉庫の可能性大だな。あれ、菅野は?」
外を眺めていたタクマを見て、「アイツ、地元なんだろう?」と加瀬が言った。
「樋口さんは通い?」
「柏だからね。野山さんは?」
「春日部だから車通勤する」
「車、持っているの。何乗っているの?」
「菅野くん!」
「嗚呼、平さん」
タクマも男性としては小柄だったが、平チエミよりは高かった。
「茨城、地元なの?」
「そうだよ。でも北茨城ね。この辺はほとんど来ないよ」
「なまってないよね」
「平さんだってそうだろ? 婆ちゃんとかはスゴイけど、若い人はそんなに……」
ふと加瀬たち三人の様子を見た。
都内のホテルにいる時、同じ会社なのかと思うほど、他のグループはあか抜けた若者だった。
なのにココでも三人は違って見える。
「一人暮らし?」
「そう。平さんは?」
「私、つくばの天久保なの」
つり革を持っているチエミは着ていた上着が窮屈そうだった。
「けっこう近いなぁ」
どう見てもチエミは美人とはほど遠い。
タクマもイケメンではなかったが、流石に好きなタイプとは違っていた。
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