桃太郎がいなくても

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それから半年ほどたち、町では宝物を盗まれるという事件が多発していました。 「おじいさんや、知ってますか?最近のこと」 「知らんなぁ」 「……時代遅れですよ」 「マジかよぉ」 「……町に宝泥棒が、いるらしいんですよ」 「そうなのかぁ」 「噂によると、その泥棒は鬼みたいで」 と、その時でしたーー。 バタンッという、大きな音と共に、鬼が現れたのです。 「俺たちの噂をしているのは、貴様らか」 「はい。……扉壊してもうたなぁ」 「お、おじいさん、なにあっさり認めてるんですか?!ていうか、扉なんて、どうでもいいじゃないですか!」 「ほぉ?」 「そういうことで、貴様らには、消えてもらう」 そう言って鬼は、持っていた鉄の棒を振り上げました。 最悪だ…この世の終わりだ… と、おばちゃんは思いました。 ……しかし、奇跡が起こったのです。 おじいさんがたまたま持っていた、壊れた扉の破片が、鬼の足に刺さったのでした。 「ギャアーーーー!!!」 鬼は叫ぶと、なにも言わずに去っていきました。 「……おじいさんや」 「?……おばちゃんや、ご飯にしようかのぉ」 「そ、そうですね」 その日から、町の宝泥棒はいなくなったそうな。 めでたし、めでたし。 すべてを読みきったお兄さんは、最後にこう言った。 「今日はなんの日?」 「……えっと」 「みかちゃんの命日だよ」
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