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通り過ぎる車のヘッドライトと、街のネオンが照らす路上で強引な口づけを受ける。
突然の出来事に驚き体を硬直させる私。その見開いたままの眼にぼやけて映るのは、大接近した彼の顔。
―――――舌!?
「……ンンッ…………」
ヌルリと入り込んできた柔らかな感触で正気を取り戻し、腕の中から抜け出そうと彼の服を掴んだ。
それでも執拗に絡みついてくる彼の舌遣い。唾液を絡め取るように口腔内を貪り、私の思考を奪い取ろうとする。
彼の熱が、匂いが、感触が、私の身体の芯を刺激してあの夜の感覚を蘇らせる。
まただ、この感覚―――――
胸が灼けるように熱くて、下腹部に潜む女の器がジンと痺れてもどかしい。
こんな公共の場でいちゃつくなんて!
品性の無い行為に羞恥が湧くけれど、濃厚なキスに魅せられて体が動かない。
飲み込まれていく理性。
人目など気にせずにどこまでも流されて、このまま彼の感触を味わっていたくなる。
私の口から熱い吐息が漏れ出したその時、それを待っていたかのように彼は舌を引き抜き唇を離した。
忽然と失った彼の感触が恋しい。ついさっきまでの恥じらいなど忘れ、今はその物足りなさに胸を切なくさせる。
「俺の味を思い出した?」
「え……」
「今の麗香の顔、俺がもっと欲しいって言ってる。……そうだろ?」
彼は唾液で濡れた私の唇を指でなぞり、夜風が耳元で囁くように静かな笑みを浮かべる。
もっと欲しい?
ええ、私はあなたが欲しい。
煮え切らない自分がじれったくて、素直になれない未知の感情に振り回されて、辛い。本当は苦しい。
もっとあなたに触れて、もっとあなたに触れられて、身体の奥に籠るこの疼きを解き放ってしまいたい。
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