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きっと、一度あなたに抱かれてしまえば楽になれる筈。
構える事なんて無い。怯えることなんて無い。
だって、男と女がすることなんてみんな同じ。今まで出逢った事の無いタイプの男に新鮮さを感じて、いつも以上に好奇心が疼いているだけだ。
上弦の月が夜空に浮かぶ騒めきの中で、互いの鼓動だけを感じ合いながら重ねる視線。
頬に触れる大きな手に自分の手のひらを重ね、私は心に言い聞かせる声に気づかれぬ様に微笑みを纏う。
敢えて言葉にはしないけれど、それが覚悟を決めた私から彼への返答のつもりだ。
「―――そう来なくちゃね」
彼は目尻を下げフッと口もとを緩めると、私の肩を抱いてタクシーに向かって歩き出した。
―――――
二人がタクシーを降りたのは、瑞穂区にある高層マンション。
緊張を顔に漂わせながら部屋に入ると、扉を閉めた彼が私を背後から抱きしめた。
「……待って。シャワーを浴びたいわ」
「更衣室で浴びて来たんだろ?それで良いよ」
耳もとを擽る彼の吐息。
敏感な身体は跳ねる様にビクッと微かに震え、背中に密着する体温に意識が集中してしまう。
「でも……」
「もう待てない。早く抱きたい」
情熱を帯びた声で言って、彼は長い指で私の顎を持ち上げ唇を重ねた。
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