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室内を照らすのは暖色系の柔らかな灯り。朝日が昇り始める頃に目覚めた私は、腕枕をしたまま寝息を立てる彼の横顔を見た。
揃えられた眉毛に長い睫毛、筋の通った鼻に薄い唇。間近で見る彼の顔は、今まで見たどんな男よりも寝顔まで美しく、いつまでもこうして眺めていたくなる。
―――口を開けば、品性の欠片も無い男なのにね。
心の中で呟いて、絹のような彼の前髪を弄りながらクスッと小さく笑った。
ことが起こる数時間前、この部屋に足を踏み入れた時には目に入らなかった室内の様子。
セミダブルのベッドが中央に置かれた寝室はとても無装飾で、その他の家具が見えない空間はまるで生活感が無い。
静寂がやけに耳に沁みる。
今もこうして私を腕に抱いて眠るベッドで、今まで何人の女を抱いたのだろう。
―――気づけばそんな事ばかりを考えてしまい、モヤモヤとした感情が積もって行く。
一人の男に執着する自分が信じられない。
こんな感情は知らないけれど、これが嫉妬心と言うものであることは解る。
雌としてのただの発情なのだと思っていた。女馴れした男がどんなセックスをするのか試してみたいと、衝動的に起こるいつもの好奇心だと思っていた。
それも一度抱かれれば急降下する好奇心だと、心が乱される事など無いと、そう自負していた。
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