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仄かに感じたときめきは、中学時代に憧れていた教師に抱いた感情に似ているけれど、それも今では滑稽な話。
妻子がありながら、教え子である私の純真を利用し純潔を奪った男。
若い肉体を欲望で舐め尽くすその姿は、教師では無く飢えた野良犬にしか見えなかった。
私の初恋もどきは、儚く汚物となり体外へ吐き出されてしまった。
嫌悪するのは父親だけでは無い。男は所詮、面の皮一枚剥がせばみんな同じだと。
―――そんな私が、今になって恋を?
「恋……これが?」
静かな寝息を立てる彼を見つめ、驚きの中で表情を固めた。
定まらない感情は騒めき立ち、封印していた心の扉をノックする。
「悠希……」
浮かされる様に名を呼び、そっと彼の顔に唇を寄せる。
ほんの少し触れただけのキス。それなのに、胸に火が灯りキュンと切なさが湧く。
その刹那、彼の眉間がピクリと動いた。
「……ンン、……麗香……起きてたのか?」
眩しい光でも見る様に、重々しく持ち上げる瞼。
「うん、今さっき。……ごめん、起こしちゃった?」
「ん~、麗香の声で起こされた」
「声?」
―――って、まさか。さっきの独り言が聞こえちゃったの!?
「麗香のエッチな声。夢の中でも俺を誘う」
彼は腕枕をしている手で私を引き寄せ抱きしめると、耳朶に唇を押し当てながら甘い声で囁く。
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