愛は初恋とともに

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体の相性が良いって言ってくれたのは、私だけ?ただ新しい女とやりたいだけで、その場のノリで言ったんじゃないよね? 聞きたいけれど、そんな重い女みたいな事は聞けない。 「何ため息つきながらクッキー食ってんだ?」 「えっ?ため息って……今ついてた?」 「ついてたついてた。深いやつ連発で。何を思い詰めてんだ?俺が相談に乗ってやるぞ?」 目を白黒させる私を見据え、いつもの調子で彼は珈琲カップに口をつける。 「……」―――ったく、何が「相談に乗ってやる」だ。人の気も知らないで。この能天気さがムカつくのよね。 「別に思い詰めてなんて無い」 冷めた風に言って、ふと目を向けたのはリビングの端にある水槽。リビングに入った瞬間に目に映ってはいたけれど、体の気怠さに負けて近づきもせず、取り敢えずソファーに腰を沈めてしまった。 「あれ、熱帯魚でしょ?魚なんて飼ってるんだ」 話題を変えるチャンスでもあると思い、透き通った水の中を泳ぐ魚たちに視線を置いた。 「あれは熱帯魚じゃなくて海水魚。好きなんだ、魚。眺めてると無心になれるだろ?」 「あなたに無心を求める時なんてあるの?静寂が最も不似合いに見えるけど?」 「茶化すなよ。こう見えて俺って意外と繊細なの。癒されるから麗香も近くで覗いてみろよ。ドリーも居るから。……ドリー知ってる?」 遠目でしか見ない私に言って、彼が声を弾ませる。
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