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え……次のパーティーで父に会えるかも知れない?
「いつもとは違うってどう言う事?」
脈絡の感じられない話の展開に眉根を寄せる。
「次回は大御所様のバースデー記念パーティーなんだ。盛大な会にするために多くのゲストを集める。久しく顔を出していない者にもね」
「……つまり?」
「あれから、父親である可能性のある人物の名を拾い上げた。でも残念ながら、最近会に出席している者の中には一人も居ない。母親が麗香を身籠った頃、店の客として名古屋をうろついていた外科医は居ないんだ」
父親である可能性の男が一人も居ない!?じゃあ、前回私が忍び込んだのはただの無駄足だったって事!?
結局は何も掴めないで終わった夜だったけど、これから何度か足を踏み入れれば、きっと手掛かりが見つかると信じていたのに……
「そうガッカリするなよ。だから、久しく顔を出していない者に会えるチャンスだって、そう言ってるだろ?」
絶望感で言葉の出ない私を見据え、彼は私の頭をポンポンと軽く撫でる。
「ちょっと待ってろ。今そのリストを持って来る」
そう言って彼は書斎に姿を消すと、1分も経たない内にリビングに戻って来た。手に持っているのは一枚の白い紙。
「これが麗香の父である可能性のある男。目をつけているのがこの男だ――」
数人の名前と病院名が連ねてあるリストの一人を指差して、悠希は言葉を切った。
「赤川孝太郎……」
「この男、現在は島根の大学病院に居るが、麗香が生れる頃は名古屋で常勤医をしていた。専門は上部消化管外科医だ」
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