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ホステスを孕ませ慰謝料を支払った裏話も然り、主催者である大御所様との会話に乱入して事実を吐かせるだなんて……
解らない。
この男、秘密とギャップの塊で正体がまるで見えない。
素直に『お願いします』と言えない私は、能天気な顔をする彼の横顔をジッと見る。
「何だよ、そんなに見つめて。もしかして……
またしたくなった?」
「んな訳あるか!ドアホ!――あんた、何者なの?どうしてそこまであの世界に精通してるの?」
ふざけた言葉を叩き落して、訝しく彼を見直す。
「う~ん、……知りたい?」
「うん!知りたい!」
「実は俺……」
うんうん、
勿体振らずに早く言えって!
「大御所様の息子なの」
「……はい?」
「俺は大御所様が愛人に産ませた子供。俺、実は楠木家の人間なんだよね~」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする私を見て、彼はふざけて「へへっ」と子供じみた笑いを浮かべた。
悠希が大御所様の息子!?
だって大御所様って、日本に腹腔鏡手術を広めた先駆者で、日本医師会を取りまとめる幹部でもあって、……
だけど、言われてみれば辻褄が合う。
父親はドクター、兄弟もドクター、ドクターオンパレードの大金持ちの医者家系。
それに、パーティーで見せたあのデッカイ態度。私に薬を飲ませた腐れ男も、悠希の凄味に完全に怯んでた。
大御所様だって、私を連れ出すという悠希の申し出を簡単に許して……
「本当に楠木宗次郎の息子なの!?……信じられない」
目を大きく見開いたまま、締りの無い顔で笑う彼を風穴が空くほどに見つめる。
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