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「……ホント?」
「ああ、本当だ。俺には未来が見える。そして将来、麗香は俺と一緒にアフリカで仕事をするんだ。どうだ?夢があるだろ?」
当然の如くサラリと言って、彼は屈託の無い笑顔を浮かべる。
えっ――――
一緒にアフリカで仕事って……それって、ドクターとしてのパートナーの意味?それとも、男と女として私を?
医師として国際支援活動だなんて微塵も考えた事は無いし、アフリカだなんて極めて非現実的な話。
冗談としか受け止められない軽々しい言葉なのに、胸は自意識過剰な鼓動を打ち鳴らす。
「行かないわよ。アフリカなんて」
戸惑う胸の高鳴りを隠し、素っ気なく言葉を返す。
「えっ!何で?遣り甲斐あるぞ~、現地の子供達は可愛いし」
「何でって……当然じゃない。不衛生はパス。空調管理の無いのはパス。寝心地悪いベッドはパス。食べ物も水もパス。あと……」
「あと?」
「日焼けしたくないから、絶対に嫌よ」
取り敢えず思いつくものを羅列して、彼の言葉を全面拒否する私。
「……あっそ。『絶対』を強調しやがって。ベッドの上以外はやっぱ可愛くない女」
ため息混じりに言って、彼はナッツの乗った丸いクッキーを摘まんだ。
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