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翌日の午後6時。
パーティーの身支度をする私はドレッサーの椅子に座り、パールのネックレスをつけて正面を見つめる。
鏡に映し出されているのは、ピンクベージュのアシンメトリードレスで着飾った女。
悠希には「露出度の高いセクシーなドレスで」とリクエストされたのだが……
前回の騒ぎの事もあり、二度と目立ってはならないと思い清楚な雰囲気を醸し出そうと意識した。
それに、今夜は父親を見つけ出せるかも知れない。
そんな初対面で胸の谷間を強調するスケスケ衣裳では、下品なアバズレ女だと名乗りを上げるだけで、見返すどころか本末転倒になってしまう。
今夜のセクシーな演出は、鎖骨が美しく見えるワンショルダーデザインだけで十分だ。
……丈、もう少し長い方が良かったかな?
タイトスカートから覗く両膝に視線を落とし、小さなため息を落とした。
陰気臭いため息が重なるのは、父親の前に立つことへの不安と緊張のせいだけじゃ無い。
視界に映り込んでいるのは、昨夜、プロポーズの言葉を添えて一之瀬さんから贈られた婚約指輪。
一之瀬さんに抱かれながら、悠希への気持ちに一線を引くと決めたのに、いざ顔を合わせる時間が近づくと複雑な感情で息が詰まる。
やってる事はアイツだって同じ。なのに、どうして私だけがこんな思いをしなきゃいけないの?
見つめているだけで指に嵌めてみるどころか、罪の意識に苛まれ手にも取れないでいるプラチナリング。
私は何て酷い女なのだろう。一之瀬さんに抱かれていながら、結局はアイツの顔がチラついて――――
より一層の深いため息が落ちた時、到着を知らせる悠希からのメールが届いた。
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